1.ストレスとは
「ストレス」という言葉は今や日常的に聞かれるようになり、小学生でも使っています。ここであらためてストレスとは何かを整理してみましょう。
ストレスとは元々機械工学の分野で「歪み」を表す用語ですが、カナダ人の生理学者、ハンス・セリエが生理学的な心身の「歪み」状態としてストレス学説を提唱し、
それ以来「ストレス」という言葉が次第に広まり現在では日常的に使われる言葉となっています。
私たちはストレスにさらされると脳が感知し何とか体の状態を一定に保とうとする機能(ホメオスタシス)を維持しようとします。この機能は「自律神経系」「内分泌系(ホルモン)」「免疫系」の3ルのシステムで支えられていますが、
ストレスが強すぎたり、長期間続いた場合にはこの機能を維持することが難しくなり様々な不調を引き起こします。
ストレスに対する反応には個人差があります。つまり、受け取り方や対処する力、心身の状態、文化的社会的背景などによってストレス反応の違いが生じます。まずは自分のことをよく知っておくことです。どんなストレスに弱いのか、
自分にとっての危険信号は何かをつかんでおきましょう。危険信号とは心身に出てくる警告です。人によって違いますが例えば「食欲低下」「便秘や下痢が続く」「眠れない」「動悸」「めまい」「発疹」「イライラ」「人と会うのが億劫」等、
自分は「この症状」が続いたら大丈夫だと思っても身体が教えてくれていると考えてください。さらに「どうしようもない」「八方塞がりだ」と思うと
ますますストレスは重くのしかかります。必ず対処法はあるものです。もし何も思いつかなかったら誰かに相談することも大事です。
生活上のストレスとして多いのは心理・社会的要因(人間関係、仕事、家庭問題など)ですが、昨今は特に新型コロナウィルスなどの生物的要因、猛暑などの物理的要因も加わってかなりストレスフルな社会となっています。
さらに生物的要因の新型コロナウィルスはウィルスそのものの脅威から、経済に及ぼす影響、生活不安や感染した人への中傷、マスクに対する「他人の目」に対する心理・社会的ストレスへと発展しています。
またマスクや頻繁な消毒による顔や手の肌荒れなど物理的ストレスも招いています。
2.自律神経系への影響
自律神経には交感神経と副交感神経がありスイッチングしながらバランスをとっています。交感神経はいわゆる「活動モード」で、心拍数や血圧をあげて筋肉への血液の供給量を増やし、唾液の分泌は減り、血管は収縮します。
副交感神経はいわゆる「休息モード」で食事中や睡眠中に優位になり、心拍数や血圧を下げて、唾液の分泌が増え、血管は拡張し消化器に血液を供給します。ストレスを受け続けるとこの2つの神経のバランスが崩れ交感神経が優位になり続けて、
だるさ、血行不良による冷えやコリ、不眠、胃腸障害などが起こり「自律神経失調症」状態となります。内分泌系への影響は、血管や細胞を通してホルモンを分泌し、その種類や量によって各器官の働きを調整する機能が低下します。
免疫系はストレスが長期化するとストレスホルモンによってコントロールできなくなり抵抗力が弱まります。
神経内分泌・行動生物学者のロバート・M・サポルスキーは『なぜシマウマは胃潰瘍にならないか』という著書の中で、シマウマやライオンもストレスにさらされているのになぜ人間だけが不眠症になったり胃に穴が開いてしまうのか?という問いを投げかけて、
脳が発達した人間はストレスホルモンの影響を長期間受けることになり、そのせいで不眠、うつ病、記憶、老化、免疫機能低下を招くことになったと述べています。本来は生物の生き残りのためのストレスシステムが進化した人間にとっては心身を傷つけてしまうことになったというのです。
3.からだのサイン