専門家コラム

「働く女性専門外来」に来院する女性に見られる、仕事に関連した不調

皆さんは、自分の健康のバロメーターは、何か、ありますか? 過労が続く時、体調の変化を感じることがあるのではないでしょうか?  睡眠不足や大きなストレスで過労が続くと、歯が痛くなる、とか、生理痛がひどくなる、とか、生理が遅れる、とか、経験している方は多いのではないでしょうか? 腰痛、頭痛、肌が荒れる、胃が痛む、食欲がなくなる、 など、それぞれ、出やすい不調はさまざまだと思います。
自分の体の弱点を把握して、大きな不調を起こさないための指標として、少し症状が出始めたら、無理をしないように調整できるといいですね。

1.仕事に関連した体調不良

関東労災病院では、「女性医師による、働く女性専門外来」という診療を行っています。そこに来院される患者様の内、7割の方が仕事に関連した不調を訴えています。
「仕事に関連した」というのは、「仕事上のさまざまなストレスが原因あるいは誘因になって体調を崩した」という場合もありますし、「体調不良のため仕事に支障が出ている」ということもあります。また、仕事のストレスがきっかけとなって、 体調不良に陥り、その不調のために仕事に影響する、という負のスパイラルに乗ってしまった方もいます。

2.どんな病気が多い?

疾患、症状として多いのは、月経困難症、月経前症候群、更年期症候群、めまい症、不安障害、うつ状態です。皆さんも、悩まされたことがある病気・症状ではないでしょうか?

3.仕事による体調不良は、いつ、起こりやすい?

「仕事上のさまざまなストレスが原因あるいは誘因になって体調を崩した」という方は、仕事に就いて間もない時期や異動後に、体調を崩す場合が多いようです。
入社直後の研修期間は、同期入社の人と一緒で、辛さを共有できる仲間もいるので、うまく対応できていたが、全体での研修が終わった後、現場に配属された時点で、配属部署に同期が一人もいなくなり、仕事の悩みや体調の変化について 気軽に相談できる人がいないため、体調が悪くなってしまった、という方が多く見受けられます。
異動後の不調は、ご自身の希望に反した部署への異動、生活リズムが大きく変化するような仕事内容の変更の場合、体調不良が現れやすいようです。

4.仕事のストレスは、どんなものが多い?

仕事のストレスとしては、人間関係が最も多く、次いで仕事内容、上司、などがあります。皆様も心当たりがあるでしょうか? ほどよいストレスは、 作業効率を上げることになりますが、ご自分にとって嬉しくない、重いストレスは、体調不良のきっかけになるようです。

5.仕事と自分の体、どっちが大切?

体調不良に対しては、薬の治療もありますが、職場の調整で症状が治まることもあります。深刻な場合には、一時休職が必要となることもあります。 場合によっては、仕事を取るか、自分の健康を取るか、何を優先するか、判断に迷うこともあります。
切羽詰まった状況の中、「今、この仕事を辞めたら、再就職は難しい」とか「今、自分が休んだら、会社に迷惑がかかってしまう」 といった考えのもと、どうにかして仕事を続けようとされる方が多いのですが、自分の体を犠牲にしてまで続けることが必要な仕事なのかどうか、冷静に考えることも必要ではないか、と提案しています。

6.女性特有の体調不良は、周囲からの理解を得にくいかも…

月経困難症(月経時期の不調)、月経不順、月経前症候群、更年期症候群は、女性特有の体調不良です。また、月経周期に伴う不調や更年期(閉経前後、各5年程度) の症状は個人差が大きいため、男性のみならず、各種症状を経験したことのない女性の方には、理解することが難しく、疾患の理解が得られないために、「気力でカバーできないのか?」とか「病気じゃないんだから」といった言葉を上司に言われ、 それが更に負担となり、症状の悪化に拍車をかけることになりかねません。
職場によっては、産業医、産業保健師が配置されていますので、うまく相談し、いい対処に繋げて頂きたいと考えます。
レディースクリニックなどの産婦人科では、月経や更年期に関連した疾患に対して、さまざまな治療法を受けることができますので、必要に応じて、医療機関もうまく活用して頂きたいと考えます。

星野寛美先生

著者:星野寛美先生
産婦人科医師
関東労災病院 働く女性専門外来担当