医療現場で患者に原因が説明困難なときに医師が良く使用する便利な言葉に「歳のせい」と「更年期のせい」があります。これを発せられた患者は煙に巻かれたようだが帰るしかありません。このことは一般の医師ですら「更年期」という言葉を正しく理解していない証左であり、いわんや社会をやです。それ故、本当の更年期障害に悩む女性はどこにも救いがない状況に追い込まれ、人生をも予定外の方向に進みかねません。
すべての女性が閉経・すなわち女性ホルモンの枯渇が原因である更年期障害に苛まれるわけではありません。しかし、約1割の女性が更年期障害のため仕事を辞めていることが様々な調査で示されています。仕事に直接影響する訴えとして、「集中力が低下した」「誤った判断やミスが多くなった」「仕事への意欲が低下した」「忘れっぽくなった」「仕事の段取りがよくわからなくなった」「時間内にさばけなくなった」とお話しされる方が多く、まとめると、易疲労感、不安、抑うつ、睡眠障害、意欲低下と言い換えられます。
更年期障害という診断がつけば、女性ホルモンの補充療法でかなりの部分が解決できます。実際に「この治療を受けてなかったら今の自分は考えられない」という声をよくいただきます。でも薬だけではありません。これを機会に働き方について考えてみるのも良いと思います。もちろん金銭的な問題もあるでしょう。しかし、日本人の働き方は尋常ではありません。明らかに日々自らの健康を犠牲にして仕えています。さらに女性は仕事以外の無償労働が極めて多いです。家事労働、育児、介護、孫の世話などひとり何役もこなしています。
更年期は自分の健康を見直す大事な時期です。更年期の不調も今まで見て見ぬふりをしてきた身体が「ちゃんと気づいて!」と警鐘を鳴らしている大事なサインともとれます。自分のために今何ができ、何をすべきかを真剣に考えて欲しいと願っています。病院に行くのも一手ではありますが、医療的側面におけるあくまでもサポート役・伴走役です。でも、置かれた状況を理解してもらえている実感だけでも味わえれば何だか勇気が湧いてきますよね。
女性がおかれている社会的・経済的・健康的な不均衡を是正する「現実的な公平性を目指す取り組み」が最重要だと考えますが、何から手を付ければよいのかは必ずしもクリアではありません。
特に様々な情報が世間にはあふれかえる昨今、どのような取捨選択をするかは個々人には難しい面もあります。
このような状況下で臨床現場に最も求められていることは、エビデンスと共感に基づいたケアです。