専門家コラム

働く女性の更年期について

皆さんは、「更年期」に対して、どんなイメージがあるでしょうか?

ご自身のお母さんが、更年期の時期に寝込んでいた、という方は、更年期に近づくことを怖いと感じているかもしれません。あるいは、もう60代になるが、ご自身の閉経の時期もよく覚えていないし、特に不調を感じることもなかった、という方もいるかもしれません。

更年期は、閉経の前後それぞれ5年間、計10年間、と考えられていますが、その時期に、女性ホルモンが急激に減少するため、さまざまな不調が現れやすくなります。

令和5年12月に内閣府男女共同参画局で実施したアンケート調査の結果では、40代は14.0%、50代は32.1%の女性がご自身で更年期障害だと思う症状を認めています。(令和5年度 男女の健康意識に関する調査 報告書 P.70

職場では、汗が出る、上半身がほてる、突然動悸が始まる、気力が出ない、集中力に欠ける、気分が落ちやすい、イライラする、といった症状で悩まされる方が多いようです。

婦人科では、更年期の時期に起こる、このような症状が、貧血、甲状腺の異常など、他の病気によるものではない、と判断される場合には、更年期障害だと診断し、治療をします。

かつては、更年期の症状は、時期が来れば治まるものであるから、治療する必要はない、と考える場合もありました。今は、更年期の不調に対しては、薬により積極的に治療するようになっています。不調のある方は、是非、婦人科でご相談下さい。

治療を受けなくても、職場で同じ症状で悩む人とつらさを話したり、対処方法のアイディアを出し合ったりすることによって、症状が緩和されることもあるようです。

また、職場の管理職の方々からは、更年期の時期の女性にバリバリ働いてほしいが、どんな不調があるのか、そして、どのような対策をするといいのか、判断しかねる、という声も聞きます。

それぞれの女性により、不調はさまざまです。

まずは、女性同士で症状や不調を話すことが可能な環境をつくること、そして、対策として、どのようなことが求められているのか、聞き取ることが期待されます。

体がだるくて仕方がない時に休むスペースをつくること、フレックスタイムやテレワークを可能とする制度、暑さ対策としてデスクに小さな扇風機を置く、室内の温度設定を個別対応できるように工夫する、など、具体的な方法はいろいろあると考えられます。「更年期」自体、プライバシーへの配慮が必要なことであるため、更年期障害とは申告せずに休むことができる制度もあるといいかもしれません。

それぞれの職場で、更年期の方々も働きやすくなるような取り組みが進むことを期待します。

なお、現在、女性の離職を防ぐために、女性の更年期障害が注目されていますが、男性にも更年期障害があると言われています。女性の更年期障害に対する取り組みは、男性のさまざまな不調に対する取り組みにも繋がると考えられます。

星野寛美先生

著者:星野寛美先生
産婦人科医師
関東労災病院 働く女性専門外来担当