特集 働く女性と生理休暇

企業取組事例:株式会社ツムラ

誰もが「隠れ我慢」しない社会へ
生理休暇の名称変更など従業員が不調を我慢しないための各種施策を実施

株式会社ツムラ
企業名 :株式会社ツムラ
業種 :医薬品
本社所在地 :東京都港区
企業規模 :単体 2,631人(男性/ 1,991人・女性/ 640人)
※2023年3月末時点
設立年 :1936年
(取材日:2023年10月6日)

【お話を伺った方】

株式会社ツムラ
広報グループ
 宮城 英子 様
 大山 尚美 様
 山田 ちひろ 様

誰もが不調を無理に我慢しない健やかな社会を目指しプロジェクトを発足
全国の生活者の方、当社の従業員に調査を行い課題解決のための取り組みを開始

当社では、誰もが不調を無理に我慢することなく、心地よく生きられる健やかな社会を目指し#OneMoreChoice プロジェクトに取り組んでいます。
不調のときに我慢するのではなく、少しだけ働き方を変える、誰かに相談する、休む、治療するなど、一人ひとりが自分に合った選択ができ、そしてその選択肢を提示できる環境が広がることで、「隠れ我慢」のない健やかな社会につながると考えています。「隠れ我慢」とは、心身の不調を我慢していつもどおりに仕事や家事を行うことと当社が定義しています。
このプロジェクトを始めるにあたり、まず全国の生活者を対象に、不調に関する実態調査を行いました。性別関係なく不調を抱えている人はいるものの、内訳として女性の方が不調を抱えている割合が高く、不調を感じていても我慢して仕事や家事を行っているということがわかりました。
これらの調査結果を受け、女性の不調に対する健康課題や社会課題解決に取り組もうというところがこのプロジェクトにおいては一番の発端になっています。
当社の従業員へもアンケートやヒアリングを行い、多くの従業員が様々な不調症状を感じていること、また、生活者対象の調査と同様に女性の方が不調を感じている割合が高い傾向にあることがわかりました。併せて「業務の生産性に影響する不調症状」を聞いた結果として、「生理痛・生理不順」が最も多い割合となりました。

部門や年齢、性別が異なる従業員で構成したワーキンググループを発足
生理休暇をFemaleケアへと社内名称を変更し、生理以外の不調にも適応できる制度へ

社内で#OneMoreChoice プロジェクトのワーキンググループを立ち上げました。ワーキンググループのメンバーは部門や年齢、性別が異なる従業員で構成し、職場環境の改善策として、#OneMoreChoice アクションとして従業員が不調を我慢しないための施策を検討しました。
その中の一つが、生理休暇の社内名称の変更です。男性が多い部署にいる場合や上司が男性の場合、生理休暇という名称では、申請しづらいといった声があったため、従来の生理休暇をFemaleケアへと社内名称を変更しました。勤怠システムでFemaleケアを選べば、取得することができます。

勤怠入力画面 勤怠入力画面

Femaleケアは、法定の生理休暇の社内名称を変更したものですが、対象は厳密に生理に限定しているわけではなく、更年期や妊娠など女性のホルモンバランスの変動に伴う不調でも利用することができます。Femaleケアと名称を変更したことによって、生理中以外の不調にも適応できるようになりました。
それまでの生理休暇は、使っている人以外にとっては、なんとなく知っているくらいの制度といった印象でしたが、#OneMoreChoice アクションでFemaleケアへ名称を変更したことを社内報に掲載したり、社内のポータルでお知らせをしたことで、「こんな休暇制度があるんだ」、「気軽に取っていいんだ」、と社内のイメージが変わったように感じています。

女性に限らず、多くの従業員も何らかの不調を抱えている
生理休暇以外の休暇制度を拡充し、誰もが休みやすい職場へ

#OneMoreChoice プロジェクトは、調査によって現状や問題点を把握し、その結果に基づいて、取り組みを行っています。現状として、女性特有の不調症状による課題が多くあるため、課題解決に取り組んでいますが、男性が全く不調症状を抱えていないというわけではありません。
Femaleケア導入にあたって、従業員に対してヒアリングしたときに、女性従業員から、「生理休暇だけ変えるのは、不公平感があって申し訳ないから、取りにくい」という声もありました。事実として、男性従業員も不調症状を抱えているので、#OneMoreChoice アクションではFemaleケアだけでなく、従来からある他の休暇制度も拡充をしました。例えば、当社の特別休暇として通院休暇(社内名称)があり、年間12日まで取得できます。これまで診断書とともに申請が必要でしたが、通院に加えて体調不良時でも取得可能としました。また、従来からあった失効年休積立制度では、積み立てた失効年休を体調不良でも取得できるようにしました。
生理や月経前症候群(PMS)といった女性特有の不調症状や更年期症状等の不調症状に対して「隠れ我慢」のない社会は、他の病気や不調症状を抱えている人にとっても「隠れ我慢」のない社会でもあるという意識は常に持っていようと気をつけています。

一番大事なことは、従業員の声を聞き、その特性に合わせた制度にすること
「隠れ我慢」のない健やかな社会を目指し、社内外に情報を発信

Femaleケアの取得率や婦人科検診の受診率はこの1年間で増えたという数値が得られていますが、毎年従業員に対して行っている健康に関するアンケートの調査結果をみると、不調の実態はそれほど大きく変わっていないというのも現状です。「隠れ我慢」という言葉が社内になかった時は、我慢していることに自分で気づいていなかった社員が多かったのではないかと考えていて、自分が不調だと気づいたことによって、不調の人の割合が増えた側面もあるように思っています。
「隠れ我慢」という言葉自体は比較的社内でも浸透してきて、認知が広がっている実感はありますが、責任感から不調があっても休めないと感じている従業員がいるという現実はまだあります。部門によっては休みにくいという意識が強かったりもするので、そういった温度差は今後変えていきたいです。
これまでは休暇制度を変えるといったところから取り組みをしてきましたが、今後各部門の働き方に合わせた周知や部門に合わせたやり方を検討していきたいと思っています。ヘルスリテラシーをもっと浸透させ、ボトムアップとトップダウンを両方行っていきたいと考えています。

#OneMoreChoice プロジェクトでは、社外に対しても情報を発信しています。
取り組みを始めた当初は、SNSを通じて「隠れ我慢」のない社会になってほしいというメッセージを発信していましたが、取り組みを進める中で、ライフステージに伴う様々な不調症状と対処法を学ぶ#OneMoreChoice 研修をオリジナルで開発し、社外への提供を開始しました。女性の健康に対する取り組みを、どのように取り組んでいったらいいか困っているといった企業様からご連絡いただくケースも増えてきています。
当社では、ヒアリングを行って「生理休暇という名前だと申請しにくい」という声が聞かれたため、Femaleケアに社内名称を変更しましたが、まずは、従業員の声を聞くことが重要です。また、会社によって、特性や状況、従業員の男女比等は異なるので、それぞれの会社でその特性に合わせた制度を取り入れることが一番大事だと思います。
#OneMoreChoice プロジェクトを通じて、今後も「隠れ我慢」のない健やかな社会を目指し、社内外に向けて取り組みを継続していきます。

生理休暇取得状況

Femaleケア導入前
(2021年度)
:138.5日(0.5日は半休)
導入後1年目
(2022年度)
: 216日