特集 働く女性と生理休暇

企業取組事例:三和建設株式会社

女性が長く働き続けられる職場へ
社員が改善提案をしやすい社内風土のもと、生理休暇を取得しやすい制度へと改善

建設業
企業名 :三和建設株式会社
業種 :建設業
本社所在地 :大阪府大阪市
企業規模 :181人(男性/128人・女性/53人)
※2024年1月1日時点
設立年 :1947年
(取材日:2023年9月22日)

【お話を伺った方】

アシスト本部 ひとづくりグループ 丁 舞香 様

きっかけはメンター制度で聞いた若手社員の声
女性社員の声を集め、社内の改善報告制度で生理休暇の改善を提案しました

取り組みを始めたきっかけは、若手社員の声を聞いたことでした。
当社ではメンター制度を行っており、新入社員と先輩社員が月に1回面談を行っています。
面談の中で、「生理休暇を取りたいが、上司に直接生理休暇とは言いづらい」という声を聞いたことがありました。
建設業界では、女性の比率が平均1割程度と言われていますが、当社は女性が3割程度と比較的多いです。若い世代の女性も多いため、生理休暇をもっと利用しやすい制度にしたいと思いました。
まず、実際に生理休暇がどのくらい利用されているのかが気になり、女性社員にアンケートを取って現状を確認することから始めました。
アンケートの結果では、生理休暇自体は知っているものの、取得した人はとても少ないということがわかりました。「生理休暇を取りたいが、無理して出勤している」、「急遽休むことになるので、申し訳なくて休みづらい」など、様々な意見があったため、もっと使いやすい制度にしたいと改善提案をしました。
最初に部署内でのミーティングで提案した時は、なぜ改善する必要があるのか、何のためにやるのか、部署のメンバーに納得してもらい、会社としてどうしていくべきかを、すり合わせるのは少しパワーがいりました。ただ、部署内で議論しながら、どのように進めていけばいいかをメンバーと一緒に考えることができたのは、社員からの改善提案を受け止めてくれる会社の環境が大きかったと思います。

インタビュー風景 インタビュー風景

生理休暇の名称を「F休」に
メールやチャットなどでも申請できることを全社員に周知しました

まず、「生理休暇」という名称では言いづらいという声を受けて、2022年にFemaleのFから取って「F休」と名称を変更し、申請しづらさを払拭しました。
また、それまで生理休暇の申請は電話ですることが多かったのですが、メールやチャット、LINEなどでも申請ができることを全社員へ周知しました。
F休は本人が取りたい日数分とることができます。そのうち毎月連続した2日は有給扱いとしています。F休へと名称を変更するより以前、2018年に無給から有給へ変更しました。利用しやすくなるよう有給にしましたが、制度を変えてもすぐに周知にはつながらず、状況はあまり変化がありませんでした。
F休へと名称を変更し、全社員に周知を図ったことで変わっていったように思います。
周囲に「F休を取得しました」という人が増えてきていますし、社員の中でF休という言葉がよく使われているとも聞きました。また、これまで生理休暇が取りづらいと困っていた女性社員からは、「しっかりと声を届けてくれた」「すごくありがたい」との声が届きました。
取得しやすい環境になってきていると感じています。

生理休暇の制度と運用上の変更点についてメールで全社員へ周知 生理休暇の制度と運用上の変更点についてメールで全社員へ周知

生理に関する研修を全社員が受講
まずは管理職から受けてもらい、研修の有用性を感じてもらいました

生理休暇の制度を変えたと同時に生理に関する動画研修を全社員で受けました。まずは、管理職に受けてもらい、研修の有用性を感じてもらってから全社員に向けて配信しました。
全社員に受けてもらうよう、各部門長からも受講するよう声がけをしてもらい、受講後のアンケートが全員分提出されたかまで確認しました。
アンケートでは、男性からも「体調が悪そうな時に声をかけづらかったので、お互いに理解が深まると声をかけやすい」、「学ぶ機会があって助かった」といった声が聞かれました。デリケートな部分なのではないか、セクハラになるのではないか、といった難しさがあったようですが、声をかけてあげたい、手を貸してあげたいと思っている男性社員は意外と多いということがわかりました。
また、逆に女性が気を使っていた部分もあったので、全社員が同じ研修を受け、同じ方向に向けたということは会社として一歩成長したと感じています。

F休は働きやすい職場づくりにおける通過点の一つ
社員一人ひとりが活躍できる職場のために、必要なことを補いながら変化を続けています

当社では、職種問わず、女性がいるため、どの現場でも女性用トイレは必ず設置していますし、女性用更衣室も用意されています。不便がゼロではないかもしれませんが、改善報告制度で、社員が気づいたことをすぐ意見として挙げられるため、職場における就業配慮にあたっても、現場の声が届きやすくなっています。

10年ほど前は、女性社員が結婚や育児で退職してしまうというケースがありました。
そこで、女性に長く働き続けてもらうために、企業主導型保育園の開設や、現場での女性トイレを設置など、取り組みを積極的に進めてきました。
このように女性と一緒に働くために、何が必要なのかについて検討し、取り組みを進めている過程でF休を導入したことで、社員にもよく浸透したように思います。
当社は社員一人一人が活躍できる状態をどう作ろうかという考えのもとに、必要な部分を補いながら常に変化していっています。
誰もが働きやすい環境を整備していくことで、この会社だったら自分は輝けるかもしれないと感じる若手も増えてきているように感じています。

生理休暇取得状況

生理休暇の呼称の変更と通達の発信により、生理休暇を「取得したかったが、できなかった」人の割合が大幅に減少した。

  • 2022年3月9日~3月16日
    (生理中に)「無理に出勤したことがある」人の割合:64%
  • 2022年4月28日(通達が発信された日)~7月31日
    (生理休暇を)「取得したかったが、できなかった」人の割合:5.1%

※社内アンケートより