特集 働く女性と生理休暇

企業取組事例:株式会社桃谷順天館

生理だけでなく月経前症候群(PMS)でも休暇が取得できるよう生理休暇の取得条件を拡大
全社的な周知を図り、月経前症候群(PMS)の認知と休暇取得率が向上

株式会社桃谷順天館
企業名 :株式会社桃谷順天館
業種 :化粧品製造販売業
本社所在地 :大阪府大阪市
企業規模 :387人(男性/118人・女性/269人)
※2023年12月1日時点
設立年 :1885年
(取材日:2023年9月26日)

【お話を伺った方】

管理本部 人事部 労務 平川 沙弥 様

生理休暇をエフ休暇へと改称し、視覚的なストレスを軽減
名称は制度の周知も兼ねて全社員にアンケートを行って決定しました

生理中に無理をして働いている社員や、生理休暇について知らない社員がいるのではないか、もしくは、制度を知っていたとしても生理休暇という名前が直接的すぎて、取得しづらくなっているのではないかと考えたことが取り組みのきっかけでした。
そういった問題を解決するため、2020年6月に生理休暇をFemaleのFをとった「エフ休暇」へと改称し、取得時の伝えづらさや、視覚的ストレスを軽減しました。また、エフ休暇では、生理だけでなく、月経前症候群(以下「PMS」という)でも休暇を取得できるよう、以前の生理休暇から取得条件を拡大しました。
名称はアンケートで社内の投票を募り、最も投票が多かったエフ休暇に決定しました。このアンケートは、社内への制度の周知も兼ねていたため、全社員を対象に行いました。当初、生理休暇の存在を初めて知ったという声が寄せられ、それまで制度を知らなかった社員がいたことがわかりましたが、アンケートを実施したことによりそういった社員にも、制度の存在を知ってもらうことができました。

全社員に理解を深めてもらうよう、社内ポータルに産業医によるコラムを掲載
周知の結果もあり、エフ休暇の取得率は年々増加しています

エフ休暇に名称を変更するにあたって、生理の症状は人によって異なるため、女性から「そもそも生理で休む必要があるのか」といった声が寄せられることもありました。
そういった声を受け、公表されている統計データから、生理に苦しんでいる人が何割ぐらいいるか、実際に苦しんでいる人は、どんな症状があるのか、症状がひどいと起き上がれないぐらい辛い場合もあるといったことを表にして示したところ、声をいただいていた社員にも実情を理解していただき、問題なくエフ休暇を導入することができました。

また、制度導入後は産業医から生理について情報発信してもらい、周知を図りました。当社では、全社員が閲覧できる社内ポータルサイトがあり、産業医のコラムを定期的に掲載しています。そこで生理をテーマとしたコラムを掲載し、性別に関わらず全社員に理解を深めてもらうための取り組みを行いました。
これらの取り組みを行うことで、生理のつらさは個人により異なることを理解していただけたのではないかと考えています。また、全社員に対して情報を発信したことにより、上司を含めエフ休暇の理解が広がり、申請もしやすくなったのではないかと思います。
以前の生理休暇と比較して、エフ休暇と改称した2年後の取得者は約2倍、3年後の取得者は約3倍と、徐々に増加しています。取得率の上昇を見ても、制度の認知が上がったと感じています。

産業医のコラムによる情報発信 産業医のコラムによる情報発信

エフ休暇の周知によって社内でのPMSの認知が広がり、
PMSで悩んでいた社員からは 「心が軽くなった」との声が聞かれました

エフ休暇導入前は、PMSにならない社員にとっては、生理についてはわかっていてもPMSへの理解はまだ充分ではありませんでした。特に男性はPMSを知らない方が多かったので、エフ休暇を周知することで、女性にはPMSという症状もあるということを知ってもらう良いきっかけになったと思っています。
PMSで苦しんでいた社員からは、「PMSがつらいので助かりました」、「PMSの症状は人それぞれなので、PMSの不調に悩んでいる社員がいることを周知されただけでも心が軽くなりました」という声が聞かれました。
生理やPMSがどういったものか周知し、理解を促しながら取り組みを進めたことで、社内の理解が得られ、エフ休暇の導入もスムーズに進んだように思います。

制度はつくるだけでなく、どれだけ活用できる職場環境・風土にできるかが重要です
制度を活用して全社員が自分らしく働きやすい会社を目指しています

取り組みを始める前は、生理休暇は話題にしづらく、大々的に発信するのは難しいのではないかという、ためらいがありました。ただ、実際に生理で大変な思いをしている方がいたので、そういう女性社員たちが無理せず働ける環境になるように、という思いで取り組みを始めました。当社ではトライ&ラーンという価値観を大切にして、新しい取り組みに挑戦しやすい社内風土なので、とにかくやってみようという気持ちで進めてきました。
結果として、それまで悩んでいた女性社員からの感謝の声も届き、頑張ってよかった、と思っています。
エフ休暇の導入は、最初のほんの一歩なのだと思います。導入して終わりではなく、そこからがスタートです。どれだけ活用できる職場環境、風土にできるか、それにはやはり「人」が重要です。各社員が、「自分はこの制度を利用したら、働きやすい」と自分なりの働きやすさを見つけてもらいたいので、積極的に活用してもらいたいです。
全社員が心身ともに健康で自分らしく働くことで、最大限のパフォーマンスを上げられる職場環境を、継続して構築していきたいと考えています。

生理休暇取得状況

エフ休暇導入前 :21人
導入後1年目 :48人
導入後2年目 :43人
導入後3年目 :62人
※すべて年間の延べ人数