特集 働く女性と生理休暇

企業取組事例:株式会社鹿児島銀行

健康課題に取り組むための制度として、男女ともに利用できる制度へ改定
名称を変更したことで生理休暇取得率も大幅アップ

株式会社鹿児島銀行
企業名 :株式会社鹿児島銀行
業種 :金融業(普通銀行業務)
本社所在地 :鹿児島県鹿児島市
企業規模 :2,098人(男性/1,176人・女性/922人)
※2023年3月末時点
設立年 :1879年
(取材日:2023年10月4日)

【お話を伺った方】

人事部 人事グループ 副調査役 西丸 綾香 様

不妊治療の休暇制度導入を検討したことがきっかけで、生理休暇を「ウェルネス休暇」に改定。
男女ともに利用できる制度へ

生理休暇制度を改定するに至ったきっかけですが、2022年に新設された「プラチナくるみんプラス」の認定取得に向け、不妊治療の休暇制度を新しく作ることになりました。その過程で、既存の生理休暇がどのくらい取得されているのか調べたところ、女性従業員が1,000人弱いる中で、年間で2~5名しか取得していなかったことがわかりました。やはり生理休暇という名称では、表現として直接的すぎて使いにくいのではないか、知っていても取りづらいのではないか、などの議論を経て、生理休暇の名称を「ウェルネス休暇 」へ変更しました。名称とともに、制度の内容も変更し、生理休暇だけでなく、男女ともに利用できる休暇として、不妊治療の検査や通院、健康診断・人間ドックの再検査受診の際にも利用できるようになり、取得単位も1日単位を1日または時間単位といたしました。生理休暇の取得日数を定めていないのは法律どおりですが、生理の期間は個人差がありつつも、1週間以上の長期間にわたり取得することは想定されないため、当行では法定を上回る措置として、全日有給にしています。

「ウェルネス休暇」への改定により、周知の機会が増え、生理休暇取得率も大幅アップ
名称を変えたことで、話題にしやすくなったという声も上がっています

2023年4月1日から「ウェルネス休暇」を導入し、生理休暇としては8月末の時点で17名が取得しました。生理休暇という名称の時は年間2~5名ほどの取得者数だったのが、数か月で10数名取得しているということは、取得しやすいものに改善されてきているのかな、と感じています。
現場の管理職からも、名称が変わったことで、制度の一環として話題にしやすくなった、という声が届いています。

生理休暇自体はずっと昔からある制度ではありますが、生理休暇単体を周知する機会としては新入社員研修等に限られていました。今回名称を変更したことで、全行的に周知する機会が増え、生理休暇があることを改めて行内で認識してもらえたことも取得率のアップにつながったのではないかと思います。

行内への周知方法としては、イントラネットで通達を掲載したり、従業員組合から組合ニュース等で周知してもらったりしました。また、当行は離島も含め130店舗以上の支店があり、その支店長が半年に一度、一堂に会する会議があります。そこで「ウェルネス休暇」について説明しました。そのほか、入行3年目、5年目といったさまざまな節目で集合研修があるため、そういった場を利用したりと、機会があれば周知を行ってきました。

イントラネットでの通知のほか、組合ニュースでも「ウェルネス休暇制度」への改定を周知
							イントラネットでの通知のほか、組合ニュースでも「ウェルネス休暇制度」への改定を周知

ニュースリリースを出したことで地元の新聞に取り上げられ、行外へも周知が図れました。その結果、県内の企業さまなどから制度の作り方などでお困りの際、ご相談を受ける機会が増えました。
鹿児島県内では当行は歴史が古く支店も多いため、県内の方にもよく知っていただいています。当行がそういった取り組みを始めると、他の企業さまからも注目していただけて、同じような取り組みをしてみようか、と考えていただけるきっかけになっているように思います。

からだの健康だけでなく、心の健康も含めた課題に取り組み、人生を豊かにする、という意味を込めて「ウェルネス休暇」にしました

制度を改定したことで、男女ともに健康管理という面でも利用してもらえているように感じています。「ウェルネス休暇」導入後に、再検査の指示のあった健康診断や人間ドックの再受診率が向上したことを見ても、健康経営という観点からも、制度導入の効果があったと感じています。

「ウェルネス休暇」という名称に変更した理由としては、「ウェルネス」という言葉が、からだの健康だけではなく、心の健康も含め、心身の健康を充実させて人生を豊かにしていく、といった意味が込められた言葉になっているからです。「ヘルス」だとからだの健康だけになってしまいますが、それよりも、からだが健康で、心も健康である、ということが大切だ、という議論の末、「ウェルネス休暇」に決定しました。
将来的に更年期障害や、男性特有の病気等があればそういうものにも対応できるように、という意味も込めて「ウェルネス休暇」という名称にしたところもあるので、今後も実際に運用していく中で見直しや再検討を続け、時代の流れに即した制度にしていきたいと思っています。

「ウェルネス休暇」のうち、生理休暇の取得状況

1日休暇 :取得人数 22人、取得回数 28回
時間休暇 :取得人数 4人、取得回数 4回
(2023年4月1日~2024年2月末時点)
※女性社員 922人中 ※1人が複数回も込み

「ウェルネス休暇」制度概要

既存の休暇制度「生理休暇」を「ウェルネス休暇」へ名称変更し、取得理由および取得対象者を拡大することで不妊治療などにも対応した汎用性のある休暇制度へ改定

改定前 改定後
名称 生理休暇 ウェルネス休暇
取得理由 女性従業員の生理日 性別を問わず、以下に該当する場合
  • ①生理により就業が著しく困難な場合
  • ②不妊治療もしくはそれに関連する検査などで通院が必要な場合
  • ③健康診断・人間ドック受診後に再検査の指示があった場合(再検査受診)
対象者 女性従業員 全従業員
付与日数 所要日数 取得理由により以下のとおり
①生理により就業が著しく困難な場合 所要日数
②不妊治療もしくはそれに関連する検査などで通院が必要な場合 年間5日
③健康診断・人間ドック受診後に再検査の指示があった場合(再検査受診) 年間1日
取得単位 1日 1日または時間単位
給与取扱 有給 有給