特集 働く女性と生理休暇

企業取組事例:株式会社サイバーエージェント

生理休暇を含め、女性活躍推進のための制度をパッケージ化
ライフステージが変わっても長く働ける環境を整備し続けた結果、女性社員の意識も変化

株式会社サイバーエージェント
企業名 :株式会社サイバーエージェント
業種 :メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業
本社所在地 :東京都渋谷区
企業規模 :7,251人(男性/66.4%・女性/33.6%)
※2023年9月時点
設立年 :1998年
(取材日:2023年10月3日)

【お話を伺った方】

全社広報室 上村 嗣美 様

生理休暇も有給休暇も、女性の休暇はすべて「エフ休」という名称に。
取得しやすさを工夫し、生理休暇の取得数は約2倍に向上

当社は女性社員も多く活躍していますが、2014年当時、会社としてきちんと女性の活躍を後押しする制度を作ろう、というところから女性活躍推進制度の設計を開始しました。その制度設計の際、女性の休暇に関して、「生理休暇を取りたい」と上司や同僚に伝えることや、女性特有の体調不良や治療・通院で休みたくてもそれを言い出しにくい、という問題点があることに気が付きました。そこでそれらの「言い出しにくさ」の解決策として、生理休暇、そのほかの女性特有の体調不良や治療・通院のための休暇、そして普通の有給休暇も含め、女性社員が申請する休暇については、休暇の種類を問わずすべて「エフ休」(エフ=Femaleの頭文字)という名称としました。この「エフ休」取得申請は、上司には「エフ休である」というところまでしかわからないようにして、最終的な内訳は人事の担当者が把握している、という仕組みになっています。
この「エフ休」を含む女性活躍推進制度の導入前と導入後の年で比較すると、生理休暇取得数としても約2倍増加しており、「エフ休」という名称変更や取得申請の仕組み変更の効果を感じています。

勤怠管理システムで「エフ休」を選択すれば、上司や同僚には理由を伝えることなく生理休暇等を取得することができる。
							勤怠管理システムで「エフ休」を選択すれば、上司や同僚には理由を伝えることなく生理休暇等を取得することができる。

「エフ休」への理解を促す勉強会を女性社員、上司双方へ実施
気持ちよく利用ができるように

「エフ休」は、生理を含む女性特有の体調不良時等に、取得できる有給休暇で、女性社員にとっては使いやすい休暇制度になりましたが、周囲がそれを不満に思ってしまう、ということがないように気を配りました。
具体的には、女性社員向けに勉強会を実施し、「エフ休」の意図や、皆できちんと運用していくことが休暇制度の継続につながる、ということを伝えています。
また、男性を含む上司たちに対しても、「エフ休」導入の意図や、部下から「エフ休」などについて質問を受けた時に、上司自身がきちんと説明できるようにと勉強会を実施しました。
社員に「エフ休」を気持ちよく使ってもらうためにも、上司の理解は重要だと考えています。

また当社は事業と人の成長を促すための適材適所を重視していて、社員一人一人がモチベーション高く挑戦することが、事業の成長や業績の向上につながる、と考えています。
人事異動のタイミングも月に2回あり、社員の希望や部署のニーズにマッチした部署異動ができるようにしています。社内での人の流動が非常に激しいため、業務の属人化がなく、誰かが急に休暇を取ったからその分人手が足りなくて困る、というようなことが起きにくく、休暇を取得しやすいという特徴があると思います。

女性活躍推進のための制度が特定の社員への制度とならないよう、社員への制度理解を進め、男性も含めた多くの社員が使えるように工夫

「エフ休」は、当社の女性活躍推進制度の中の一つですが、この「女性活躍推進制度」という名称のままだとなかなか社内に浸透しないし、利用も促せないのではないかということで、つい口に出してみたくなるような名称を検討しました。担当者5名で100個ほど案を出して、最終的に「ママ(mama)がサイバーエージェント(CA)で長く(long)働く」という意味を込めて、「macalon(マカロン)パッケージ」という名称にしています。
このmacalonパッケージは、「エフ休」のほかにも子供の看護や通院時に在宅勤務ができる「キッズ在宅」、子どもの学校行事や記念日のために取得できる「キッズデイ休暇」などもありますが、これらの制度設計の際に気を付けたのは、特定の社員だけが優遇されている、と映らないようにすることでした。「キッズ在宅」も「キッズデイ休暇」も、希望者は男女関係なく利用できるように設計しています。
「macalon(マカロン)パッケージ」が特定の社員のものになってしまうと社員の「しらけ」を生んでしまう、という懸念があったので、この「しらけ」を排除するためにも、勉強会などを通じて、多くの社員にとって意義のある制度であることを理解してもらうよう努めています。

社外へも「macalon(マカロン)パッケージ」を周知することで、就職希望の学生さんの増加など、さまざまな波及効果を実感

「macalon(マカロン)パッケージ」の導入に際しては社内だけでなく社外にも広く周知しましたが、それらをとおして感じる効果のひとつとして、当社への就職を検討している学生さんたちから、「妊娠・出産後も働き続けられる環境なのか」等の質問が減ったことが挙げられます。男性だけでなく女性も活躍できる会社である、といったところに魅力を感じて採用試験を受けに来てくれる学生さんが増えてきた、という印象です。
また、学生さんの親世代の方も、当社の制度についての報道をご覧になられたり、人事担当者のインタビュー記事を読まれたりして、親御さんが「いい会社なんだね」と入社の後押しをしてくれる、応援してくれるというケースも増えてきました。制度を作るだけではなくて、外部にきちんと伝えていくことの効果を感じています。

女性のライフステージが変わっても仕事を頑張れる環境作りを

「macalon(マカロン)パッケージ」の導入から10年ほど経ちますが、女性社員の意識も変わっていっていて、結婚や妊娠、出産でキャリアをあきらめず、長くこの会社で活躍し続けてくれる女性社員が増え、それが当たり前になった、という大きな変化を感じています。
これまでも時代の変化やニーズに合わせて少しずつ制度を拡充してきました。今後も、女性のライフステージが変わっていっても自身が描くキャリアを築けるような環境を作っていきたいと考えています。