特集 働く女性と生理休暇
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企業取組事例:株式会社アイル
研修受講をきっかけとした全社的な取り組みで生理に対する理解を促し、
生理=タブーという雰囲気を払拭
「問題に向き合い、変えていく」会社の姿勢が社員のエンゲージメントにも好影響を与える
企業名 | :株式会社アイル |
業種 | :情報通信業 |
本社所在地 | :大阪府大阪市 |
企業規模 | :868人(男性/614人・女性/254人) |
※2023年8月末時点 役員・パートアルバイト・派遣除く | |
設立年 | :1991年 |
【お話を伺った方】
経営企画部 広報企画課 吉野 美紀 様
男性を含めた全社員が生理に関する研修を受講
研修を受けた役員がその日のうちに協議を始め、生理休暇を有給化にしました
当社は社員の男女比が約7対3と男性が多いのですが、最近では女性も増えてきています。
女性社員の上司が男性社員というチーム構造となりやすく、生理による症状で悩んでいても上司に相談しづらい雰囲気がありました。
こうした会社の状況や、個人的にも生理による症状で悩んでいる女性社員の声を聞いていたことを踏まえ、2020年8月に生理に関する研修会を開催しました。
男性社員を含めた全社員を対象としたのは、男性社員もこの生理研修を受けて女性社員のマネジメントに活かしていただきたいですし、プライベートでもご家族に女性がいれば関わってくるからです。
生理研修の中で、ディスカッションの時間があり、そこで女性社員から「有給の生理休暇があると思って入社したが、無給だったので残念だった」、「生理で休みたい時は有給休暇を消化しているが、もし事故や病気になった時に有休が残っていないのではないかという不安がある」という声がありました。
こうした声を受け、この研修に参加していた男性の役員がその日のうちに協議を行い、生理休暇を有給化にしました。
生理休暇は勤怠システム上で申請し、上長と総務で承認するようにしています。他の人からは生理休暇を取得したことはわかりません。
また、事前でも事後でも申請は可能で、生理中でなくても、例えばPMSや生理が始まりそうでお腹が痛いといった理由でも、本人からの申請があれば取得できます。
社員アンケートの声を受け、全拠点の社内トイレに生理用品を数種類設置
取り組みを進めるにあたっては、社員アンケートを行い、「会社のトイレに無償で使える生理用品があったら便利だと思いますか」という質問に対し、「あった方がありがたい」という回答が100%でした。この結果を受け、全拠点の社内トイレに生理用品を設置し、社員が自由に使えるようにしました。
設置する生理用品もアンケートの結果を受けて数種類用意しています。私生活で使用していない製品も会社で試してもらって、生理用品の選択肢が増えればいいと思っています。
社内トイレ風景
生理は女性だけの問題ではなく、会社全体で考えていくべきこと
アンケートに寄せられた生の声を示すことで生理への理解を促しました
男性はもとより、女性でも生理が重くない方は、症状が重い方の状況が想像しづらいというところがあります。
実際にアンケートに寄せられた社員の生の声を示すことで、生理への理解を得られました。私自身、アンケートに寄せられた意見を見て、生理が重い人はこんなに苦労していたのかと驚かされました。
また、生理研修の際も、生理に関する取り組みを社内にアナウンスする際も「生理は女性だけの問題ではなくて、男性にとっても自分ごとのように考えるべき問題だ」ということを、意識して伝えてきました。周知をする時もあえて「男性もご覧ください」という注意を向けるようにしたり、男性役員や管理職層には個別で連絡をしたりしました。
生理は女性だけが考えることではなく、会社全体で考えていこうと、アナウンスの仕方を工夫しました。
生理休暇の取り組みは一つのきっかけ
困っている社員が声を上げれば会社は動くという姿勢が、社員に伝わりました
生理研修に参加してくれた男性社員からは、「生理がこんなに大変なのかと驚いた」、「いたわる気持ちを持とう」といった意見が聞かれました。
生理が重く、朝礼に頻繁に遅刻してくる社員がいるチームがあり、以前は男性上司が頭ごなしに注意することもあったようなのですが、生理研修を受けたことで、男性上司もそれぞれに事情があるということを理解してくれたようで、みんなの前で頭ごなしに注意することがなくなったという声も聞いています。
女性社員からは「生理休暇を利用して、とても助かった」といった声が聞かれました。休暇の取得率も伸びているので、求めていた社員には活用してもらえている実感はあります。
また、これまでは社内で「生理」という言葉が飛び交うことがありませんでしたが、制度を改定するにあたって社内でアナウンスをしたり、メディアにも取り上げていただいたことで、生理に関するニュースが社内で当たり前のように聞かれるようになり、生理=タブーという雰囲気を払拭できたように感じます。
予想外だった反応としては、会社が問題に向き合って、制度を変えたということに、社員全体が驚いて感激してくれたことです。声を上げたら会社が動いてくれるのだ、ということが伝わって、些細な意見でも言ってくれるようになりました。エンゲージメントが高まり、すごくいい変化をもたらしたと感じています。
また、ニュースで取り組みが取り上げられたのを学生さんや社員の家族の方が見てくれて、「いい会社だね」と言ってもらったこともありました。
困っている社員が声を上げてくれたら対応する。今回はたまたま生理に関する取り組みだったというだけで、それが男性の問題でも介護や障害、病気などに関することであっても、対応して変えていく。生理休暇の取り組みはそういった会社の姿勢を示す一つのきっかけになったと思います。
生理休暇取得状況
1日休暇 | :取得人数 73人、取得回数 290回、取得率 約29% |
(2021年1月18日~2023年8月末時点) | |
半日休暇 | :取得人数 38人、取得回数 83回、取得率 約15% |
(2022年10月16日~2023年8月末時点) |