専門家コラム

生理休暇に新たな発想を

生理休暇(労働基準法第68条)は「生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合には、その者を生理日に就業させてはならない」というものです。無給でも有給でも差し支えないことや上司に言い出しにくいこともあって、その取得率はわずか0.9%という調査結果(令和2年度雇用均等基本調査)もあります。医師の診断書もいらず口頭の申し出でよく、その日数を就業規則等では限定できないことや、雇用形態等に関わらず誰でも請求でき、取得にあたっては半日または時間単位でもよいことになっています。とはいえ、生理休暇が取りやすくなりさえすれば、働く女性の健康は守られるのでしょうか。

産婦人科医から産業医になった立場から、生理休暇を現代の働く女性の健康管理に役立てるためには、休暇を取得し休養することと併せて婦人科の受診等も検討してもらう必要があると考えています。現代病ともいわれる子宮内膜症は、世界の生殖可能年齢女性の約10%が罹患し(WHO Fact sheets 2023)、月経困難症状を放置すると、将来の不妊や妊娠出産時のトラブル、卵巣癌になるとされています。多くの女性が痛みを我慢し産婦人科受診に至らず、子宮内膜症についてきちんと治療を受けられている人はわずか10%とされています(日本子宮内膜症啓発会議 子宮内膜症 Fact Note)。生理休暇も取りづらく病院受診をためらっている場合などは、職場と主治医の連携を担う会社の産業保健スタッフにぜひ相談してみてください。

一部の先進的な企業では、月経以外の健康配慮も含め、妊活・妊娠出産・更年期障害など婦人科受診を可能とした女性のための有給休暇制度を取り入れ始めています。すべての働く女性が生涯を見すえ健康管理を実践できるよう、ヘルスリテラシーの向上や環境整備を含め、幅広い発想の元、生理休暇制度の活用について労使で話し合ってみてはいかがでしょうか。

長井聡里先生

著者:長井聡里先生
株式会社JUMOKU 代表取締役/医師