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専門家からのアドバイス 働く女性の身体と心を考える委員会より

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産業医科大学 産業医実務研修センター 所長 森 晃爾 特別養護老人ホーム等における母性健康管理ヒヤリング調査結果の産業医学的考察

1.母性健康管理措置に関するルールや手順
介護施設内で母性健康管理措置を確実に実施するためには、ルールや手順が必要である。ただし、多くの施設長等が懸念しているとおり、厳格なルール化は柔軟な対応を阻害する可能性がある。したがって、妊娠の申出から配慮を受ける手順および妊娠経過中の症状等の発生によって配慮を受ける手順と作業ごとの就業配慮の基本的考え方を明確に文書化したうえで、それぞれのケースに応じた柔軟な運用を可能とすることが望ましい。今回の調査では、就業配慮のルールが存在するにも関わらず事業主が認識していない事例や認識不足によって周囲からの不満が訴えられる事例などが報告されており、文書化によって周知を行うことが重要である。

2.就業制限の内容
介護の業務は、施設ごとに共通性が高く、業務ごとの作業者の負担を明確にしやすい。ほとんどの施設で、妊娠の申出によって移乗や移動介助を伴う作業を免除したり、法令上の制限業務である夜間勤務を免除したりしていた。さらに、妊娠時期によって細かく制限の範囲を決めていた施設もあった。しかし、調査対象となった施設は良好実践事例とみなすことができ、適切な対応が行われていない施設も少なくないと考えられる。したがって、妊娠中の介護業務における就業配慮に関する基本マニュアルの作成が検討されるべきである。ただし、今回の調査では、妊娠中の症状等への対応事例がなかったが、基本マニュアルを作成する場合には、症状等に応じた就業上の配慮についても盛り込むことが望ましい。

3.メンタルヘルス上の課題
介護施設において、女性職員が離職するケースには、職場の人間関係によるストレスなど、メンタルヘルス上の課題も少なくない。また妊娠によって就業制限が行われた場合にも、周囲との軋轢が発生しているようである。人間関係に関わる課題であるため、日ごろからのコミュニケーションが重要であるが、想定される問題について管理監督者研修の実施が望まれる。

4.業務に関わる健康障害リスク
介護の業務の共通性によって、一般職員に対する健康障害リスクが想定しやすい。具体的には、腰痛と感染症が主なものと考えられる。腰痛対策については、それぞれの施設で、介護機器の整備やリハビリ職員を活用した研修などが行われていた。介護職員に対する安全衛生マニュアルがあれば、小規模の施設なども含む、多くの施設で有用と考えられる。

5.その他
妊娠中における対応や育児への支援などは、施設の規模によって充実度に差が存在する点も、今後の支援のあり方において考慮する必要がある。

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