池田心豪 委員
独立行政法人労働政策研究・研修機構 企業と雇用部門主任研究員
母性健康管理の対応としては、業務負荷から妊産婦を保護することと、そのために労働時間管理を意識的に行うことが基本です。情報サービス業の場合は、妊娠に至るまでのハードルが結構あり、妊娠に至らずに辞める、ないしは子供を産まない選択をするケースも少なくありません。
情報サービス業は、全体的に長時間労働の傾向があり、データを見てもそれほど適正な労働時間管理が浸透しているとは言い難い状況です。働いている人があまり残業免除の申請をしてないのが実態で、恐らく申請しづらい側面もあるのだと思われます。
調査では、「労働時間の短縮変更の希望」が高いことが確認されましたが、中でも「負担の軽い仕事への変更」の希望が高く、特に「精神的な負担が軽い仕事への変更」が必要だと思う割合とそれが実現できていた割合とのギャップが大きいことがわかりました。
休憩や通勤緩和などの労働時間管理の問題に加えて、面談やストレスチェックを通じて、通常通りフルタイム勤務ができていますとか、多少の残業は大丈夫ですという人も本当に大丈夫なのか、注意深く見ていかなければなりません。
それから、労働時間問題を考える上での最近の考え方として、長くないけれども負荷が高いといったようなことを労働時間の「質」と言っています。今までは、労働時間が長いことが問題視され、長いから短くしましょう、休みましょう、となっていました。ですが、たとえ1時間働いてもその1時間が健康に対してあまり影響のない1時間と影響度が大きい1時間では、労働時間の「質」に違いがあるのです。
単純に「休めばいい」となかなか換言できない健康問題があるということも踏まえ、「質」の面からも労働時間について考えていく必要があると思っています。