企業取組事例
株式会社 ワコール

「販売員にも行き届く健康取組」

女性従業員が約85%をしめ、しかも、内勤者より外勤者の比率が高く、更にその内の約70%が外勤者である。全国にいる外勤者に向けても、 健康支援の取組みに工夫をこらして実行している。

ワコール
株式会社 ワコール
https://www.wacoalholdings.jp/
  • 業種:繊維製品製造業
  • 本社:京都府
  • 従業員数:単体 4,822名(うち女性 約85%)

※2020年3月末現在

主な取り組みのポイント

乳がん・子宮がん検診受診率向上のための環境の整備と受診勧奨

内勤者は、乳がん検診車AIO(アイオ)で、就業時間中に受診できるようにし、外勤者には、定期健康診断時に受診できるように環境を整備している。

外勤者に関しては、定期健康診断時に乳がん・子宮がんの検診ができるようにしている。経費も健保組合の補助金によって、ほとんど自己負担なく受けられるようにしていて、 かかりつけの病院で受けたい人は、別途補助金申請をして、受けることができる。内勤者は、所有しているバス検診車AIO(アイオ)で就業時間中に乳がんのマンモグラフィーとエコー検査ができる。抵抗感がないよう、女性の先生にきていただくよう配慮している。 子宮がんは別の検診機関に依頼している。この検診でがんを早期発見、治療をして職場に復帰している人もいる。又、子宮がん啓発セミナーも実施していて、セミナーには、男性も参加している。

2020年9月~「パーソナル休暇」を導入!

傷病からの復帰後、有給休暇が少ないが定期的な通院が必要な場合や、不妊治療等の本人の事由や、家族の通院付き添い、学級閉鎖への対応など、広い範囲で利用できる休暇制度。有休が残り6日きってから使え、 年に6日付与される柔軟な休暇制度である。生理休暇制度は申請しにくいという人にも使いやすいよう、ネーミングもこだわった。

女性の健康(PMS/更年期等)に関する情報提供・啓発

従業員は、かなり年齢層幅広く、年々、40歳以上の中高年層も増えてきている。紙ベースや、Webセミナーを活用して情報を提供し啓発している。婦人科がご専門の産業医にセミナーをしてもらったりもしている。 外勤者とは、対面だったり、一律の集合型の教育は難しいが、以前、給与明細が紙ベースの時は、毎月、健康に関する情報を同封していた。現在では、店頭で見られるパソコンを活用し、イントラや健保組合のホームページ等で啓発を行っている。

女性の健康に関するアンケートによる課題把握と対策の検討

生理に関する症状(肩こり・腰痛・頭痛等、どんな症状があるのか?)を回答するアンケート、更年期も同様、アンケートを実施。

アンケートの結果で、課題として感じられるものをピックアップし、それに対しての対処方法や生活習慣改善などの情報を発信している。子宮がんセミナー開催後のアンケート 結果では、子宮がんについて知ることができた。他のがんも含め、検診を受けることが大切だと感じた人が多かった。

メンタルヘルスや介護等の相談窓口の周知

イントラや、健康診断結果のフォローをするときに、個別の啓発資料を同封したり、相談窓口のちらしをいれている。介護についてはガイドブックも作成している。

ストレスチェックによる高ストレス率は、男性に比べると女性の方が高いので、女性の健康課題の一つと感じている。又、中高年以上になると、介護の問題で負担になっている方が多いので、相談窓口の周知を徹底している。 介護については、会社として用意している制度、それを利用して働いている人の実例をあげたガイドブックを会社側で作成している。介護事例で、こういう時、まず何をしたらいいか?というのもフローで説明している。
※介護のみならず、産後も作成していて、職場復帰をスムーズにするための面談シートも用意している。



<その他の取り組み>
  • ・ヘルスリテラシー向上のための啓発教育
  • ・疾病の早期発見のための各種健診(がん検診)の実施と受診勧奨及び結果フォロー
  • ・予防的な生活習慣改善プログラムの提供(禁煙・メタボ等)
  • ・メンタルヘルスサポート(相談体制の充実・ストレスチェックの結果サポート等)
  • ・健康増進に取り組める環境の整備提供
  • ・健康経営(ワコールGENKI計画)の推進

健康対策に取り組もうとしたきっかけ

健康保険組合が事業主が実施すべき労働安全衛生法の健康管理業務を受託していて、何十年も前から取り組んでいる。
現在、中期計画「ワコールGENKI計画2020」では、生活習慣病・がん対策・メンタルヘルス対策の3つのカテゴリーで目標数値と行動計画を定め、達成に向けて様々な施策に取り組んでいる。

導入に際して工夫したこと

内勤者より、外勤者の比率も多いことから、対面や集合型のセミナーの機会を設定し難くく、健康診断の結果フォロー時に情報資料を同封したり、個別に電話にて対応し、 最近では、店頭のパソコンで健康啓発情報をみられるようにした。

今後の課題、展望

メンタルヘルスケアが課題で、ストレスチェックは受検勧奨し、今年度は100%達成までに至った。ただ、医師面談が必要な人も、なかなか敷居が高く受けていただけないので、 補助的に保健師相談も実施している。外勤者に対しては、今後、携帯やタブレットのコミュニケーションツールの整備などが課題で、個別に情報発信やサポートができるよう取り組んでいる。2020年度までのGENKI計画取組み後、検証して、次期計画では、 行動改善の部分もKPI(※1)に盛り込みたい。



(※1) KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、一般に「重要業績評価指標」と訳されます。企業目標やビジネス戦略の実現に向けて、業務プロセスが適切に実施されているかどうかをモニタリングする目的で設定される業績評価指標(Performance Indicators)のうち、特に重要なものを指します。
(出典:人事労務用語辞典 日本の人事より)

女性従業員の声

  • 販売職Aさん:2回乳がんに罹患。「2回目とも乳がん検診でみつかり、手術・休職後放射線治療をしながらの通院も配慮してもらい、2回目については体力がなかったのでそれに応じて 休職や業務も配慮してもらったので、本当に感謝している。

産休前や育休復帰後についての声

  • 百貨店リーダーBさん:通勤も大変で、特に悪阻時期が大変だった。遅番もあったので、二人目の産休前は、残業や遅番を免除してもらった。妊娠初期は周りやお客様からもわかりにくいので、 職場でもマタニティマークなどの工夫があるといいと思った。
    職場にいる産休、育休の経験者(上司や先輩)のおかげで、妊娠中の辛さも共感し、理解してもらえたことが支えとなった。復帰後は、突発的な子供のトラブルが一番大変だった。又、コロナ禍では、主人が可能な時に在宅勤務をしてもらうなど、 夫婦で連携とって乗りきっている。

  • 百貨店勤務Cさん:短時間勤務だったので、産休前は、つらいことはあまりなかったが、体が辛い時は、座ってできる作業を割り振ってもらえた。育休復帰後は、選択時短勤務、残業免除を利用したが、 日曜日は早番でフルタイム勤務だった。普段働く時間が短いので、その分予約会は積極的に動き日々の売上げに繋がるようにした。

  • セールスDさん:移動が多く、パソコンや書類が重く大変だった。産休前の大型販促では、販売応援を見送るなど、会社には配慮してもらった。
    復帰後は、子供の迎えでちょっとした残業もできないので、産休前より時間に慎重になる事が大事なことである。


ワコール セミナーポスター
         本社でのセミナー開催時の写真

(2020年8月の取材に基づく内容です。)

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