特集 企業取組事例

〜女性も男性も健康でイキイキ働く企業の取り組み〜

従業員、お客様、社会のすべてを元気にする取組「太陽の元気プロジェクト」を推進し、一人ひとりが元気で働きやすい職場へ大躍進

人生100歳時代を見据え、「従業員」「お客様」「社会」の元気に貢献する取組「太陽の元気プロジェクト」を推進。トップが中心となり継続的に健康増進の取組を進めたことで、従業員のワークスタイルも大きく変化し、誰もが元気で働きやすい職場に。

太陽生命保険株式会社

業種 : 生命保険業
本社所在地 : 東京都中央区日本橋2-7-1
従業員数 : 全体 10,853名/男性 1,034名/
  女性 9,819名(2022年3月末時点)
髙木 厚志様

お話を伺った方

太陽生命保険株式会社
人事部 給与厚生課
課長代理  髙木 厚志様

企業の健康支援に対する考え方について

従業員の健康支援に取り組むことになったきっかけを教えてください。

2016年6月より、「人生100歳時代」を見据え、「健康寿命の延伸」すなわち“元気に長生きをする”という社会的課題に応えるため、「太陽の元気プロジェクト」を社長が中心となって開始しました。

お客様を元気にしようと思ったら、当然ながら、従業員が元気でないと真にサービスを提供できません。「太陽の元気プロジェクト」とは、「従業員」が元気になり、「お客様」に元気になっていただき、そして「社会」の元気に貢献するための取組です。
掛け声だけにならないように、社長以下役員が出席する経営会議の場で、毎週人事部が健康経営についての施策を発表しています。6年間続けてきた中で、大小あわせ100以上の施策を実行してきました。従業員が健康になり、お客様、社会にも広めていきたいという思いでコツコツ取り組んでいます。
健康経営のホワイト500(※)には、6年連続で認定していただき、直近3年では50位以内に入っています。一つ一つ取組を積み重ねてきた結果を高く評価していただいたと考えています。

(※)経済産業省が認定する「健康経営優良法人」の大規模法人部門において、上位500法人が「ホワイト500」に認定されます。

健康支援に対する企業の理念や基本的な考え方を教えてください。

従業員が長く「元気」に働ける取組として、女性の活躍推進や有給休暇の取得促進、福利厚生制度の充実などに取り組んでいます。
「人」は大切な経営資本です。従業員を元気にする取組として、ワーク・ライフ・バランスの充実も大切になってくると思います。時間外勤務は2016年の「太陽の元気プロジェクト」立ち上げ以降減っていき、現在は年間平均1.5時間になりました。業界トップクラスです。総労働時間は減少し、有休取得率も向上しました。「太陽の元気プロジェクト」の一環として、会社が本気で取り組んだ成果が出てきています。
さらに、業務改革の一環として、従業員のワークスタイルの変革に取り組んでおり、ペーパーレス化の推進やオフィス環境の整備を通じた効率的な働き方を通じてワーク・ライフ・バランスの実現を図っています。

女性特有の健康支援について

女性特有の健康支援のために取り組んでいることはなんですか。

治療等と仕事の両立支援

育児・介護・治療等、仕事と生活の両立支援制度を充実させています。

  • 通院休暇制度の利用要件拡大、取得単位の柔軟化
    妊娠中および出産後、不妊治療に利用できる通院休暇の適用範囲にがん治療を追加しました。女性特有のがんである乳がんや子宮頸がんは、他のがんと比べると若い時に罹患しやすく、働いている従業員の年齢帯である20代から40代の罹患率が最も高くなっています。仕事と生活を両立できるように支援していこうと制度を改定しました。
    また、2022年4月から通院休暇を10分単位で取得可能となりました。勤務管理システムを10分単位で入力するようにしているので、最小単位で休むことができます。抗がん剤治療や放射線治療は回数が多いですが、1日休みを取らなくてもいい場合があるので、柔軟に対応できるようにしています。不妊治療で取得実績が多くなっています。
    自身の通院だけでなく、看護休暇も10分単位で取得可能です。小さいお子さんがいる従業員からは「とても助かる」という声が届いています。
  • 週3日、週4日勤務制度
    がん治療や介護をしている従業員は申請することで、週3日、週4日で勤務することが可能です。
  • 積立傷病休暇の利用要件拡大
    有給休暇を積み立て、疾病の際に利用できる制度について、不妊治療やがん治療でも利用できるよう利用要件を拡大しました。

一口に健康支援といっても、人によって状況は異なるので、それぞれの状況に応じた選択ができるよう様々な制度を導入しています。
身体がつらいときにしっかり休んで体調を回復することにも、10分単位で休み、通院することにも対応可能です。短時間勤務を選択し、少しずつ業務を行っていくこともできます。個人の症状に応じた柔軟な対応が可能になっています。

女性の健康課題に関するe-ラーニング

女性の健康課題解決に向けて、e-ラーニングでの社内学習を実施しています。病気の未然予防のため、情報提供して従業員に知識を得てもらうことが大事だと思っています。
テーマは従業員から人事部に多く寄せられた問い合わせや、健保組合からの提案などから選定をしています。
テーマ例)女性の更年期に現れる健康課題、乳がん、子宮に関する病気、骨粗しょう症、卵巣の病気、PMS(月経前症候群)等

男性も含めた全従業員を対象としています。制度があっても申し出づらい、辛さを理解してもらえないということがないよう、男性も理解を深めていくということが必要です。継続的な教育が大事だと思っています。

取り組もうとしたきっかけは何ですか。また、行動計画に記載した理由を教えてください。

全国の支社には20歳から80歳くらいまで幅広い年齢層の営業職員が勤務しているため、多様な人材が活躍できる就労環境の整備が必要です。女性はライフステージによって課題がどんどん変化していきます。幅広い年齢層の方々に対応できるようあまり対象を絞らず、包括的に情報提供や支援を行っています。行動計画にも、結婚、妊娠、出産、育児から介護や傷病とそれぞれのステージに応じた取組内容を策定しています。
保険会社ですので、お客様とお話をしたりする時のために、自分たちがライフステージごとの課題等を理解しておくことも必要だと思っています。

取組の中で工夫されたこと、大変だったことを教えてください。

まずは、制度を知ってもらわないことには、利用促進が望めないため、周知に苦慮しました。福利厚生ガイドブックを作成・改定するとともに、組合からも周知を促してもらっています。ガイドブックはいつでもグループウェアで見られるようにしています。制度の中には妊娠・出産、治療などのメニューがあり、状況に応じて利用できる支援制度があるかを確認することができ、具体的な手続き方法までを分かりやすく掲載しています。従業員本人の傷病やご家族の介護等で仕事をやめようかと迷っている人が、ガイドブックを見て、支援制度があるなら続けてみようと思うことがあるかもしれません。まずは制度を知ってもらうことがとても大切だと思います。

どんな効果がありましたか。

男性も含めたe-ラーニングを実施することで、女性の健康課題に関する男性の理解を深めることができ、職場での配慮につながって良かったと考えています。それまで更年期障害のことなど、あまりピンときてなかった男性も、e-ラーニングを通じて気づきがあり、女性従業員への配慮、声かけができるようになったと思います。

従業員に対する健康支援について

従業員(男女問わず)の健康支援のために取り組んでいることは何ですか。

クアオルトを活用した従業員の健康づくり

クアオルトとはドイツ語で健康保養地という意味です。自然環境や地域を生かした山登りやウオーキング、地産地消の食事による栄養補給、自然や温泉で体を癒すことで、健康の三大要素の運動・栄養・休養を満たし、健康増進に効果があります。医学的にも生活習慣病や認知症予防に効果があるという研究結果が出ています。ドイツでは健康増進、治療のための施設として活用されており、健康保険が適用されています。
日本ではまだ認知度は低いですが、(株)日本クアオルト研究所が普及を行っており、弊社は協賛することでクアオルトの普及を支援しています。
山形県上山市では、少子高齢化で医療費が上昇を続けていましたが、クアオルトを推進したことで、半減したという事例があります。少子高齢化による医療費の上昇は社会全体の課題でもあります。太陽の元気プロジェクトの「『社会』の元気に貢献する」というコンセプトにつながるので、プロジェクトが始まったタイミングでクアオルトを活用した取組を始めました。
弊社では、太陽生命クアオルト健康ウオーキングアワードを主催し、クアオルトの導入を目指す自治体を募集しています。自治体に健康寿命の延伸に向け「クアオルト健康ウオーキング」を活用したまちづくりビジョンを発表していただき、表彰された自治体には、支援金をお渡しし、ウオーキング コースの整備や、専門のスタッフを育成のための費用に使っていただいています。
受賞された自治体のクアオルトプログラムには支社の従業員が参加します。「無理をせずに、楽しみながら」がコンセプトです。会社で費用を負担し参加を募っているので、参加者数は増えていっています。従業員のお子さんが参加することもあります。

体操の様子

ウオーキングの様子

ウオーキングの様子2

「アミノインデックス®リスクスクリーニング」の実施

「アミノインデックス®リスクスクリーニング」とは血液検査により、「現在がんである可能性」と「将来、脳卒中・心筋梗塞、糖尿病を発症するリスク」を一度に評価できるものです。従業員は30歳以降5年ごとに従業員の福利厚生制度の一環として、無料で受けることができます。リスクが高いと判定を受けた場合は、生活改善の指導をしたり、医療機関を紹介することで、疾病の未然予防に努めています。

「MCI(軽度認知障害)スクリーニング検査プラス」の実施

55歳以上の従業員を対象として、血液検査で軽度認知症のリスクを判定することができるMCIスクリーニング検査を行っています。弊社で働いている営業職員の検査結果を同時期の他の受検者と比較したところ、当社営業職員の免疫力が高く、認知症発症のリスクが低いという傾向がありました。当社営業職員は、営業活動により、認知症予防に効果的とされている「歩く」「頭を使う」「コミュニケーションをとる」ことを日常的に行っていることが本結果の一因と考えられています。

検査結果の研究

弊社では、研究施設として太陽生命少子高齢社会研究所を作っており、従業員や希望して受検していただいたお客様のアミノインデックス®リスクスクリーニング、MCIスクリーニング検査プラスのデータはそこで匿名加工情報として分析しています。
すぐに結果が出るわけではないですが、受検していただいた方のデータが蓄積されることで、より精度の高い分析ができるようになり、生活習慣病予防の手段を考えるきっかけになります。研究所の取組も元気プロジェクトに繋がっています。

取組の中で工夫されたこと、大変だったことを教えてください。

クアオルトは、生活習慣病や認知症の改善効果があると研究で認められているものの、一度の参加で健康増進につながるわけではありません。一過性にならないよう、クアオルトを「行動変容」のきっかけとして位置づけ、クアオルト参加後の健康増進に向けた行動を継続推奨する啓蒙チラシを作成する等の工夫を行っております。
太陽生命では健康増進アプリの利用も推奨しています。アプリを使うと歩数の計測や深い眠りにつけたかを確認する睡眠計測、健康状態にあった食事のメニューの確認などができます。健康について考え、行動変容するきっかけとしてアプリを使っていただきたいです。

どんな効果がありましたか。

弊社ではお客様に生命保険を提供しているのですが、疾病の予防を推奨しながらサービスのご提案をしています。従業員自身が未然予防の様々な取組を経験しているので、お客様にも話がしやすいと思います。社内だけではなく、お客様の元気のために相乗効果が生まれています。 以前は時間外勤務も当たり前のこととしてありましたが、2016年に太陽の元気プロジェクトが開始され、経営トップが本気で取り組む姿勢を見せ、継続して取組を行ってきたことで大きく変わりました。
勤務管理システムに入力された時間と実態に乖離がないか、人事部がすべてチェックし、10分以上乖離がある場合は修正してもらいます。人事部長自らが支社に電話をして、時間外勤務をしないように声掛けをすることもあります。そういった人事の取組の結果も時間外勤務の減少につながっていると思います。
男性の育児休業の進捗管理も行っています。スケジュールを提出してもらい、計画どおり取得しているか電話で確認をしたり、育児休業が取りづらいということがあれば、所属長に人事部から話をしたりしています。今まで休みが取りづらかった支社長も育児休業を取得した事例などを社報に載せることで周知し、申し出しづらい雰囲気が払拭されていったと思います。男性の育休取得率は、7年連続で100%です。従業員に浸透してきたことで、人事部から確認の電話をする機会も減ってきました。
経営トップが本気で取り組むことで従業員に浸透し、意識が変わっていきました。従業員の“当たり前”が変わったという実感があります。

職場における一体感の醸成について

弊社は従業員の9割が女性で、特に支社はほとんどが女性です。女性の支えがあって成り立っている会社なので、女性を大事にしようという感覚が当たり前になっています。入社したときから、子育てをしながら頑張っている女性職員の話を聞いたり、人柄に触れることで、自然と応援したくなります。新入社員はその文化に染まり、ずっと受け継がれていくので、当たり前の感覚として醸成されているように思います。小さい子どもがいる方も休みが取りやすいですし、周りも支援してくれる社風です。

今後の課題や展望があれば、教えてください。

プレゼンティーイズム(※1)やアブセンティーイズム(※2)について、経年変化や測定方法に関する開示状況に注目が集まっていますが、業務パフォーマンスの評価・分析が課題です。それぞれの課題をどう数値化し、施策の効果検証を行っていくことについて試行錯誤の段階です。
また、メンタルの不調は日本全体で多くなっている問題であり、復帰支援の制度やプログラムを充実させていくことが重要だと思います。 毎年、現況調査で従業員自身とご家族の健康状態について、細かいところまで確認しています。不調や配慮すべきところがあれば、所属長を通じて、人事部も把握できる仕組みを作っているので、適切な配置や業務負担などを人事部としても考えていきたいです。

(※1)プレゼンティーイズム:欠勤にはいたっておらず勤怠管理上は表に出てこないが、健康問題が理由で生産性が低下している状態
(※2)アブセンティーイズム:健康問題による仕事の欠勤(病欠)

これから女性の健康支援に取組もうとしている企業に、まず何から取り掛かったらいいか、アドバイスがありますか。

一朝一夕にできることではないかもしれませんが、一番は経営トップの取組姿勢だと思います。弊社は、トップダウンで元気プロジェクトを立ち上げ、そこから強力に推進していきました。経営トップが本気で取り組む姿勢を見せれば、従業員にも伝わります。「人」が一番大切な経営資源であり、資本であると本気で思うことが重要だと考えます。すぐに効果は出ないかもしれませんが、従業員が健康になることで組織の活性化や生産性の向上につながります。持続的に腰を据えて取り組んでいくことが必要です。
また、無理をせずに皆で楽しみながら健康活動を続けていけることも重要です。
弊社では健康増進のアプリを使って「歩活(あるかつ)」というウォーキングのイベントを活用しています。チームを組んで歩数を競い合うのですが、コミュニケーションや健康の増進に役立っています。
ウォーキングはどこでも出来ますし、健康に大変効果があります。コストもそれほどかからないので、健康増進活動のきっかけとしておすすめです。健康増進の活動は持続的にコツコツやらないと効果は出ません。楽しく行えることが必要だと思います。