専門家コラム

痩せ体型でリスクが2倍!知っておきたい痩せメタボ

「わたしは痩せているから大丈夫」は危険です。 最近明らかになってきた、痩せ体型(BMIが18.5未満)だからこそリスクがあがる”痩せメタボ”について解説します。

1. 体内で静かに進行する【痩せメタボ】

痩せメタボとは、痩せ体型(※BMI18.5未満)でも、糖尿病やメタボのリスクを高めてしまう状態のこと。 最近は、リモートワークの増加などによる運動不足・食事量の低下による筋力低下や脂肪筋(筋肉に脂肪がたまった状態)に よりリスク上昇が懸念されています。

メタボの診断基準、代表的な項目が「腹囲」ということからも、ぽっちゃりお腹が出ている肥満体型、 高血圧などのイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。 ところが、このイメージとは相反する「痩せ体型」でもリスクがあることが明らかになってきました。 「太っていないから大丈夫」と思っていても、痩せ体型で筋肉量が少ない(BMIが18.5未満)タイプのあなたは、 実は気づかぬうちに体内では生活習慣病(代謝異常)のリスクが進行している可能性があります。
働く女性を対象とした調査(注1) でも、日々の習慣(食事量の不足/菓子類の増加/栄養素の不足/身体活動レベルの低下/睡眠時間の不足など)により、 体脂肪率の上昇・筋肉量の減少がおこり、糖尿病リスクが高まることを明らかにしてます。 妊娠・出産世代でもあるこの世代の糖尿病リスクは、生理不順・排卵障害、生まれてくる子どもの発育発達障害などにまで影響を及ぼすことも忘れてはなりません。 (注2)
※ BMI算出方法:体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))

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(注1)2015年まるのうち保健室報告書/Copyright© 2016 三菱地所株式会社・一般社団法人Luvtelli 東京&NewYork All Rights Reserved.
(注2)http://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/autism-news-51/is-gestational-diabetes-linked-to-autism-698373.html https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29936530

2.痩せ体型は普通体重の人よりも糖尿病発症リスクが2倍(注3) という報告も。

糖尿病も肥満体型の人に多い、というイメージを持っている方も多いかと思いますが、 正確には「代謝異常による血糖値が高い状態」であり、体型だけで判断することはできません。 血糖値は、血液中のグルコースの濃度を表す数値であり、これは「インスリン」というホルモンにより本来正常にコントロールされます。 血糖値の低下により空腹を感じ、食事により上昇することで満腹となり、その後上昇した血糖値はインスリンにより適正値にコントロールされるというメカニズムです。 血糖コントロールが上手にできない状態(耐糖能異常)の要因として、このインスリンの分泌量が少ない/または分泌されていても効き目が悪い状態(インスリン抵抗性)が考えらます。
従来インスリン抵抗性は肥満で見られると考えられてきましたが、痩せ形の耐糖能異常においても、インスリンの分泌低下だけでなく、インスリン抵抗性が認められることが最近の研究でわかってきました*)。 (注4)痩せた若年女性(低体重)では、標準体型の女性と比べ、耐糖能異常の割合が約7倍高いという報告もあります*)。(注5)血糖コントロールの能力は個人差があり、同じ食事をした場合でも異なります。 食後の極度な眠気や集中力の低下など自覚症状がある場合もありますが、こうした反応がない場合もあります。

3.食事量が少なくても高脂肪食に注意!日常生活活動量UPで痩せメタボ予防

仕事の忙しさ、糖質制限ダイエットや極度な健康思考などによる食事量と栄養の不足と合わせて、 盲点となりがちな高脂肪食のリスクにも注意をしたいところ。 菓子類や嗜好品の増加(洋菓子や高脂肪のドリンク)、和食より洋食(昼食は手軽にとれるパスタ・パンメニューなど)への偏りにより、 全体の食事は高脂肪傾向となり、バランスは乱れてしまいます。
外出自粛やリモートワークの増加による、筋肉量低下・脂肪筋の増加も懸念されています。 これに、食事の不足と内容の乱れが組み合わさると、代謝異常(血糖コントロールの乱れ)である、痩せメタボによるリスクに拍車がかかります。

予防対策としては、食事量と内容・活動量UP、身体の代謝を整える睡眠や入浴習慣も整えることがオススメです。まずはできそうな習慣から、取り入れていきましょう。

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(注3) 参照研究  順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学・スポートロジーセンターの田村好史先任准教授、河盛隆造特任教授、綿田裕孝教授らの研究グループ
研究成果:米国内分泌学会雑誌「Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism」のオンライン版で公開
(注4) https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs13340-012-0067-x
(注5) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33512496/

【働き女子6つの新習慣メソッド】

1.朝ごはんを食べよう

血糖コントロールや体型管理 / 体内時計を整えあらゆるホルモン分泌を整えてくれるため、朝ごはんを食べる習慣は、夜の眠りも整える習慣となります。

2.朝ごはんにたんぱく質を食べよう

体内時計のリセット効果を促してくれるたんぱく質。たんぱく質の消化によって熱を生み出し、冷えの予防や、筋肉量 / 体脂肪率を適正に整える効果も担っています。

3.栄養のあるおやつを食べよう

忙しく働く中で、3食で必要な栄養素を補うことは簡単ではありません。栄養のあるおやつを チョイスして、おやつタイムを栄養を補うチャンスタイムにしましょう。

4.カフェインを1日300m以下に抑える

眠りの質を低下させてしまうことで認知が高い「カフェイン」ですが、美容ドリンクや栄養ドリンクなどにも含まれています。なるべく18時以降の摂取を控えることもオススメです。

5.1日8,000歩 歩く

運動習慣の獲得は難しくとも、階段の利用や電車で立つといった活動量UPから始めましょう。階段の「2UP/3DOWN」の習慣で、トイレは別のフロアを使用することは気分転換にもなりオススメです。

6.1日6時間以上眠る

6時間以上の睡眠が翌日のパフォーマンスに満足感をもたらすことがわかっています。 睡眠時間確保のために時間の使い方を振り返ってみるはいかがでしょうか。


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豊永彩子先生

著者:豊永彩子
管理栄養士/フリーランス
一般社団法人Luvtelli(ラブテリ)