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特定社会保険労務士 鈴木 千恵子 Yes,we can!

ワークライフバランスと言う言葉が少しずつ認知される様になり、仕事をしながら妊娠・出産そして子育てをする環境は徐々に整備されて来ています。しかし、制度は整っても、実際に運用していくのは生身の人間同士、諸々の行き違いで多くのトラブルが起きている現実もあります。

女性労働者が産休を取り、男女とも育児休業を取得する事は当然の権利で、国として生き延びるために必要な措置でも有りますが、残された人達に少なくない負担を掛けるのも事実です。

誰もが心置きなく妊娠・出産そして育児に専念し、会社や周りの仲間が気持ちよくサポートをする為には、それなりの配慮や準備が必要なのでしょう。今回は労働者の側から少し考えてみたいと思います。

第一は、周りとの良い関係を築いておく事です。
どんな世界でも、上手く言っている時にはそれ程トラブルは起こりません。下手なピアノも、仲の良いお隣さんだったら『少しずつ上達しているなぁ〜。』で済みますが、挨拶してもそっぽを向いているようなお宅だったら、耳障りな騒音になってしまいますね。防音装置が今ほど発達していなかった過去には、そんな小さなトラブルが殺人事件になってしまった事もありました。

出産・育児等で不在の間、快くサポートをしてもらう為には、普段からのコミュニケーションがとても大切です。仲良しクラブになる必要はありませんが、お互いの生き方や考え方、仕事に対する姿勢を尊重し、感謝の気持ちも持ちながら、何かあったときにカバーしあえるような関係作りをして欲しいと思います。会社の制度についても、何時でも忌憚無く話し合える雰囲気が出来ていれば、一緒に対応する事が可能になるでしょう。

第二は会社の制度や法律をよく調べておく事です。
就業規則を読んだ事がありますか?就業規則は会社にとっての「憲法」で、労働時間・賃金等の労働条件や、労働者が就労に関して守らなければならない規律などについて具体的に定めています。入社してから退職する迄の全てのルールが網羅されている重要なもので、不要なトラブルを避ける為に、労使共に遵守する義務があり、又守られてもいるのです。

母性保護措置や育児休業についても、制度として整え就業規則に記載をする事が義務付けられています。何事もそうですが、妊娠が分かってから会社と交渉をするのはとても大変で辛い事です。会社の制度や現状を知っていれば、それがたとえ不十分なものであっても、事前に対応を考えられますし、会社と協力して制度の充実を図ることも出来るでしょう。その為の資料やツールは厚生労働省や労働局、女性労働協会のHPでも見ることが出来るようになっています。

不幸にも会社に理解がなく制度が全く整っていなければ、職場の仲間と協力をして、出産後も安心して働き続けられる、法律に則った組織作りを会社に働きかける事も出来るかもしれません。早いうちから準備をして、手を打つことが大切です。

第三としては、自分の業務や仕事の進捗状況を常に分かりやすくまとめておく事です。
これは出産・育児に限った事ではなく、不慮の事故等でいつ会社を休むか分かりません。そんな時にも慌てず、仕事の引継ぎがスムースに行くよう備える事は、自律した労働者・プロとしては当然の事でしょう。そう、リスク・マネージメントですね。

少し前『東大合格生のノートはかならず美しい』と言う本が評判になり、学生のみならず社会人が多く買い求めていた事がありました。試験科目が多い東大に合格する為には必要なポイントを絞ってまとめる・・・等、その目的は違っても、頭の良い人・仕事のできる人は、誰が見ても分かるようなノート作りをしているのだ、と感心したものです。

突然休んでしまっても、職場の誰かが仕事をすんなり引き継げるような「仕事ノート」を普段から作成しておけば、自分自身の仕事を見直す事にもなり、弱点や不要な作業を減らす事もできます。それがあなた自身の仕事に対する姿勢をハッキリさせ、又キャリア・アップにもつながることでしょう。

妊娠・出産そして育児は、長い人生の中の大切で、至極当たり前のイベントの一つです。
介護も含めて誰にでも起り得る事。人は一人で生きている訳ではないのです。それを理解した上で、色々な情報を収集し、周りとの良い関係作りをし、そして何処にいても必要な人材(必ずしも優秀な人であるとは限りません。)になれるよう、真摯に取り組んでいけば、誰もがキャリアを継続できる・・・そんな世の中を作りたいと思います。
社会も企業も、そして労働者自身もその為の努力はまだまだ必要なのですね。
Yes,we can!

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