働く女性の心とからだの応援サイト > 妊娠出産・母性健康管理サポート > 専門家がお答えします > 通勤や外勤などで、放射線がお腹の赤ちゃんへ影響しないか不安…

文字サイズの変更 印刷
皆さまから寄せられたご相談に専門家がお答えします
働く女性からのご相談

通勤や外勤などで、放射線がお腹の赤ちゃんへ影響しないか不安…

妊娠初期で、東京都内で働いています。営業職で外に出ることが多く、今回の原発事故による放射能物質がお腹の赤ちゃんに影響を与えるのではと不安です。また、出産後も授乳に影響が出るのではと不安です。
内勤への変更や休業を申し出たほうがよいのでしょうか。

専門家からのアドバイス

この時点までの状況では、東京都内で外気にさらされることにより、妊娠や胎児に影響が出ることは考えにくいです。

(財)放射線影響研究所 理事長 大久保 利晃先生

放射能ばくろ*による生体影響としては、被ばく後比較的短時間で現われる、嘔吐・下痢、出血、脱毛・皮膚障害などの急性障害と、数年後から数十年経過後に現われる慢性影響とに大きく分けられます。

通常、前者は1シーベルト(Sv)以上の全身ばくろを受けた場合で、誰でも被ばく線量の大きさに応じてより強い症状が現われてきます。それ以下の線量では、「がん」などの障害が遅れて出てくるのですが、これはたとえ同じ量の被ばくをしても、影響の出る人と全く出ない人があります。この場合も、被ばく線量の多い人が少ない人より高い確率で影響が出ます。

今回の場合、福島第一原子力発電所構内で事故対応に当たっている人を除き、急性障害が問題になることは先ず考えられません。問題は慢性影響ですが、現在のところ未だ事故の状況が収束しておらず、今後どうなるかは分かりません。この時点までの状況では、ご質問のように都内で外気にさらされることにより、妊娠や胎児に影響が出ることは考えにくいです。

≪関連資料≫
厚生労働省「妊娠中の女性や育児中の母親向けに放射線への心配に答えるパンフレット」(pdf:1.3MB)

今後の推移を見る場合、最も気をつけるべきなのは、放射性ヨウ素です。ヨウ素は甲状腺の発育に必要な元素で、胎児や子供は成人に比してヨウ素をより多く必要とし、たとえ放射性ヨウ素であっても甲状腺は血液中のヨウ素を積極的に取り込みます。環境中の放射性ヨウ素濃度が高くなると、子供の甲状腺には放射性ヨウ素がより多く蓄積しますので、甲状腺がんに罹患する危険が高まるのです。

体内に取り込まれる経路としては、大気からの直接吸入、水、牛乳、母乳の摂取、胎内で母体からの移行などが考えられます。したがって、今後万一現在より汚染が広がり、都内でも基準値を超すような場合には、ご質問のような対処はばくろを低減する措置として一定の効果が期待できます。しかしその効果は限定的で、そのような事態に立ち至れば、むしろ退避などそれ以外の措置が重要になってくると思われますので、今後の原発の状態の推移を注意深く見守っていくことが最も重要です。今の段階では、都内ではほとんど影響は考えられませんので、現在では環境レベルに関するストレスを感じないようにすることのほうが重要と思われます。

なお、一定量以上の放射性ヨウ素にばくろされることが予想される場合、あらかじめ放射性でないヨウ素を飲んでおくと、それによって甲状腺が必要量のヨウ素で満たされるので、後から放射性ヨウ素が体内に入っても、甲状腺には取り込まれず、放射性ヨウ素による障害を予防することができます。ただ、効果の維持される期間が限定的なことと、人によっては副作用があるため、勝手に使用することは勧められません。本当に必要になった時に、医師の処方により服用されることをお勧めします。
*放射能ばくろ:放射能にさらされること

この画面のトップへ

厚生労働省委託 母性健康管理サイト

(C) Ministry of Health, Labour and Welfare, All Rights Reserved.