3番目のポイントは、個々の状況にあわせた育休前、育休中、復帰後についてのマネジメントです。育休前には業務の引き継ぎが当然必要ですので、誰にどのようにいつまでにするのか検討しなければなりません。そのためには対象者に業務の棚卸を行うよう指示し、確認を行います。必要性の低い業務は省略、廃止、外部化を、重要業務については上位者に、通常業務は下位者等に引き継ぐようにします。この休業期間は引継ぎ者にとって少なからず負担がかかりますので、業務の質、量のすり合わせと同時に“お互い様”の社内風土の構築やフォローする社員の評価について会社が意識すること、そして引継ぎ者がこれを機会に新たなキャリアが積めるという意識醸造が大切です。
育休期間では、復帰に向けてコミュニケーションを取るようにしましょう。会社からは定期的に社内の様子や会議議事録、人事等の情報提供を行います。育児にも慣れ復帰間近の場合、対象者が希望すれば業務についてのマニュアル等を渡してもいいかもしれません。また、この期間にスキル・アップを図りたいと思う方もいるかもしれません。会社が思う以上に本人は、仕事の空白期間に不安がありますので無理のない形で支援することも検討するとよいでしょう。2ヶ月ごとの育児休業給付金申請手続きのために(可能であれば赤ちゃんも一緒に)会社に来る時間を利用して意思疎通を図り、職場復帰へつなげていくことをお勧めします。
最後に復職についてお話します。この時期は、多くの復職者が復帰への不安や仕事と育児、家庭とのバランスで悩む場面に遭遇します。復帰する社員はこどもの突発対応など、自分の意志ではどうにもならないことに対して申し訳なく思っていますので、できる限りのことを頑張ろうとします。しかしこれだけはどうしようもありません。そのため上司は、就業環境を正しく把握し、優遇ではなく“適度な配慮”をすることが必要となってきます。例えば、「時間に制限がある中でベストを尽くすため、あなたは何ができるか?」「そのためには会社はどのような支援が必要か?」面談を通して確認します。そこを聴くことでおのずと対応する内容が出てきますし、新たな信頼関係が構築されることも間違いありません。
女性目線の経営が利益を伸ばすことは既知の事実となっています。妊娠、出産、育児期をマイナスイメージで考えるのではなく、個々のライフイベントで得られる経験が仕事の一助となり、ひいては会社の持続的な経営発展につながると考えてはいかがでしょうか。