「女性にやさしい」制度というのが、本当に従業員にとって有意義な制度として機能しているのか、という視点から再点検してみる必要はないでしょうか。
育児休業や短時間勤務など、長い期間を設定すること自体、何も問題はありません。働く側からみれば、選択肢が増えるわけですから。ただし、休業や短時間勤務を長期間にわたって継続して利用することのデメリットについてもきちんと考えた上で、効果的な制度利用を選択していく、ということが利用する側には求められます。すなわち、長期化の休業や短時間の勤務は、フルタイムで働く人に比べると経験できる仕事の幅は狭くなります。また、職場にはそうした状況をフォローしてくれている上司や同僚がいます。自分自身のキャリア、そして職場への影響を勘案しながら、効果的に制度を利用するという姿勢が利用者には求められます。提供される制度はとりあえず使っておこう、ということでは、人事制度・施策の改善に水を差すことになりかねません。
しかし、これは制度を利用する(多くの場合は女性従業員の)側だけに問題があるわけではありません。なぜ自分の長期的なキャリアを考えずに短期的な制度利用に向かってしまうのかといえば、組織からの期待が感じられない、それを踏まえて自身のキャリアビジョンが描けない、という理由があげられます。その意味で、組織や上司の問題が背後には存在しているのです。自分のキャリアを考えて制度を効果的に利用している女性は、将来のキャリアの展望があり、そこから逆算して「今」が選択できるわけです。
女性は管理職になりたがらない、自分の仕事の幅を広げようとしない、短期的に物事を考える、という苦言をよく耳にしますが、実は、それは企業の女性に対する期待、あるいは上司の育成の姿勢、に問題があることが多いのも事実です。「女性にやさしい」という言葉は、妊娠や出産といった女性特有の問題の局面をとらえたときには必要ですが、「女性にやさしい」が独り歩きして、「女性は特別」という意識が、職場マネジメントに浸透してしまうと問題です。
女性のキャリアを局面でとらえるのではなくトータルで考えることのできる包容力、それが女性の力を伸ばす組織の「やさしさ」ではないでしょうか。
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