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法政大学人間環境学部教授 宮川路子 労働者のワークライフバランスをサポートする快適職場を目指して

現在、日本の産業界は様々な局面で大きな転換期を迎えています。働き方も多様になり、ワークライフバランスを大切にした就労のあり方が求められています。

ワークライフバランスというと仕事と家庭の両立、とくに女性が仕事をしながら、いかに子供を産み育てるか、ということが主なテーマであると捉えられがちのようです。しかし、実際はワークライフバランス−仕事と生活のバランス−においては妊娠、出産、子育てだけが問題となるのではありません。また、子育てと仕事の両立をとってみても実際には女性だけではなく、男性にも大きく関わっているものです。

この考え方は、世の中の流れとして少しずつ浸透してきているような気がします。男性の育児参加(参加という言葉もそぐわない気がしますが)にしても、“イクメン”の出現に象徴されるように、当たり前のこととして受け止められるようになりました。特に若い世代においてその傾向が強いようです。例えば保育園の送迎を担当する父親は年々確実に増えているとことを私自身も実感しています。

また、残念ながら取得率が低迷している男性の育児休暇取得促進は、男性(夫)自身のワークライフバランスのためだけでなく、女性(妻)のワークライフバランスのためにもとても大切なことだといえるでしょう。育児休業から復帰する妻の仕事をサポートするために夫が育児休暇をとるという例もみられるようです。

企業の立場からすれば、ワークライフバランスを女性労働者だけの問題として扱っているのでは改革を進めることはできないでしょう。ワークライフバランスは労働者全員にとってのテーマとして捉え、取り組んでいくべきものなのです。

確かに妊娠・出産に関係する母性保護などは、女性だけに限定した施策が必要となります。このため、いかにも特定の女性だけが恩恵を受ける特別な措置というイメージが強いのは事実です。けれども現在の産業現場では、メンタルヘルスの不調や生活習慣病の治療のために長期にわたって休む労働者もいれば、高齢の親の介護のために介護休暇をとらざるを得ない労働者も見受けられます。こうした労働者に就労の軽減を行う、あるいは休職を認めるなどの措置を行うことは、まさにワークライフバランスのための配慮といえるでしょう。

子育ては、ほぼ期間限定です。子供は時とともに確実に成長して手が離れるものです。それに対して、労働者自身の疾病、老親の介護問題はどのくらいの期間かという予測をたてることが難しく、いつ誰の身にふりかかってくるかわからないといっても過言ではありません。こうして考えると、女性労働者の子育てを温かく見守る会社というのは、老若男女を問わず、すべての労働者にとって優しい会社、働きやすい職場―快適職場であるといえるでしょう。

そのような会社のための条件としては、従業員を人として大切にする姿勢を持ち、誰であっても必要なときに休みが取れる体制が整っていることが求められます。休みが長期になった場合には代替要員の確保も必要になってくるでしょう。

このためには、日頃から仕事と人の管理をしっかりと行うことが重要です。いつ誰が休んでも、他の人が仕事を代われるような状態にしておかなければなりません。そのためには円滑なコミュニケーションがすべての人に求められます。

そして、配慮や保護を受ける労働者はそれを当然の権利と思わず、感謝の気持ちを忘れてはいけません。又、周りの人にも思いやりの心を持って接してください。温かいコミュニケーションによってお互いに支え合い、そして感謝する、思いやりのある快適職場を目指して、企業と労働者一人ひとりが努力していきたいものです。

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